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UPSの運転方式について
APCブランドUPSでは3つの運転方式のUPSを取り揃えています。
常時商用給電方式、ラインインタラクティブ方式、常時インバータ方式について説明をします。
● 常時商用給電方式
通常時には商用電源をサージ保護およびノイズフィルタを通して出力し、電源障害時にはバッテリーから出力する方式です。
バッテリーへの切替時間は5〜10ミリ秒程度です。
利点 :
回路が比較的簡単なことで部品点数が少なく、小型で他の方式より安価にできます。
通常時は商用電源をスルーして供給することでUPS自体の消費電力が少ない方式です。
推奨使用環境 :
一般のご家庭のように電圧変動が小さく、電圧、入力波形が安定した環境での
停電、雷サージ保護の使用に向いています。
主な採用モデル :
PC ESシリーズ, Smart-UPS Lithium-ion UPS 400VA
注意点 : 常時商用給電方式はご使用にあたっての注意点です。
常時商用給電方式はリーズナブルな価格で提供できる、小型化に向いた運転方式ですが、
ご使用にむかない環境があることにご注意ください。
・ご使用環境の電源電圧の注意点 (常時商用給電方式の場合)
ご家庭の電源は通常100V前後で設定されており、比較的電源電圧が安定していることから
常時商用給電方式で問題はございませんが、
電源電圧の変動が大きい施設や電圧が高く設定されている場所での使用には不向きな運転方式です。
(注意点)
入力電源の電圧が100Vの設定に対して10% *1 , 90V~110Vの範囲を超えると
UPSがバッテリー運転に切り替わることから、100Vから10%近い範囲で設定されている環境、
変動する環境では、常時商用給電方式のUPSのご使用を推奨できません。
*1 機種により異なります。
設定で13% (製品より17%) 程度までバッテリー運転に切り替わらない範囲を広げられますが、
業務用途として使用される場合には、ラインインタラクティブ方式のUPSをご使用されることをお勧めいたします。
施設内やビル, 店舗で電源電圧を高めに設定されている場所や、
工場や店舗, オフィスで周囲の装置の稼働により電圧が降下してしまう場所においては
電圧が100Vから外れるごとにバッテリー運転になり、 頻度が多い場合には
使用できない方式であることにご注意ください。
常時商用給電方式のUPSを検討されている場合には、
電圧範囲を超えるとバッテリー運転する方式であることをご理解いただき、
ご購入前に機種の仕様と実際にご使用される施設、コンセントの電圧を確認ください。
・バッテリー運転時の出力波形の注意点 (APC ESシリーズ)
APC ESシリーズでは、よりリーズナブルな価格で提供するためにバッテリー出力波形に
矩形波(くけいは)を採用しております。
矩形波はコンピューターの電源で採用されているPFC電源との組み合わせに不向きな場合があることから、
APCブランドの矩形波出力のUPSではPFC電源に対応できるよう製品改良されており、矩形波の機種においても
コンピューターのバックアップにほとんどの場合に問題なくお使いいただけますが、まれに矩形波出力に
対応できないPFC電源の機器があることにご注意ください。
矩形波に対応していない機器は矩形波出力のUPSのバッテリー運転に対して、都度停止してしまうことが
考えられます。なお、ACアダプターで入力をとる製品では矩形波の電源でも通常問題ございません。
推奨アプリケーション:
常時商用給電方式のUPSは、 |
〇 利点 | 推奨 | × 注意点 |
・ 安価 ・ 軽量 ・ 省スペース ・ 低消費電力 | ・電源が安定しているところの 停電対策・サージ保護向き ・ 一般のご家庭や 電源環境の良いオフィスに適します | 電圧が高い(110V以上), 低い(90V以下) になるとバッテリー運転に切替ります 矩形波モデルでは、バッテリー運転時に 動作しない機器が稀に存在します |
● ラインインタラクティブ方式
通常はサージ保護回路、ノイズフィルタを通してサージ、ノイズを除去し出力します。
入力波形検知ができ、フィルタで除去できない波形があるとバッテリー給電に切り替わります。
通常は出力と充電に、バッテリー給電の際はDC→ACとしてインバータを常に介しており、
バッテリーへの切替時間は5〜10ミリ秒です。
また、APCブランドのラインインタラクティブ方式のUPSはすべて自動電圧調整(AVR)機能を持っており、
不安定な電源環境においても自動的に電圧を調整し、バッテリーを使用することなく適切な電圧を提供します。
調整可能な電圧範囲以上に変動した場合には、バッテリー運転に切り替わります。
APCブランドでは、Smart-UPSシリーズをはじめ、 APC RSシリーズ, APC BKシリーズなど、
多くのラインインタラクティブ方式のUPSをラインナップを取り揃えており、
電力事情の悪い国や地域を含む世界中で使用されている方式です。
利点 :
電源障害のなかでも多い電圧変動に対して回路で補正することで、
バッテリー運転に切り替わる機会が少なく、バッテリー運転にもごく短時間で切り替わることから、
多くの機器、場所の使用に耐えるコストパフォーマンスの高い方式です。
通常時は商用電源をスルーして供給することで比較的消費電力も少ない方式です。
推奨使用環境 :
業務用途として、ほとんどの場所でご使用いただけます。
オフィスや店舗の業務システム、公共施設、データセンターなどでの実績も十分な方式です。
また、サーバー以外にもゲーミングPCやワークステーションの高性能コンピューターの
バックアップ、ダウンタイムが許されない機器の瞬低、サージ保護対策にも適しています。
主な採用モデル :
APC RSシリーズ,
APC BKシリーズ,
Smart-UPS LCD SMTシリーズ,
Smart-UPS X SMXシリーズ
注意点 : バッテリー運転への切替時間がある方式ですが、高速で切り替わり、時間が2〜10ミリ秒と短いことから、
この切替時間に対応できないIT機器はほとんどなく、切替時間について注意いただく必要はございません。
・自動電圧調整(AVR)の注意点
同じ入力電源にレーザープリンターや複合機、大電流が流れる機器がつながっていることによって
UPSの入力電源の電圧低下や設備で波形乱れがある場合で、
自動電圧調整 (AVR)機能が一日に何度も切り替えが発生する環境では、
想定している期待寿命より早くUPSが故障する場合があります。*2
*2 頻繁にAVRが作動する環境の場合には、UPSをより長い期間お使いいただくために
作動頻度を減らすように電圧降下を引き起こす原因になっている機器とは別の電源から入力電源をとる、
UPSの感度設定を下げて切り替え頻度を減らすようにしてください。
AVRの作動頻度を低減させるための電源環境の改善が難しい場合には常時インバーター方式のUPSが適しています。
推奨アプリケーション:
ラインインタラクティブ方式のUPSは、 オフィスや店舗、公共施設、オンプレミスのサーバールーム、大規模データセンターなど 屋内環境であれば場所を問わず、業務用途の機器の電源バックアップに適しています。 APCブランドのUPSでは、世界中で長年使用されているSmart-UPSシリーズのほか、 家庭や店舗でも設置しやすいサイズのAPC RS, APC BKシリーズなど 3000VAまでの出力容量のさまざまなシリーズ、機種を取り揃えています。 |
〇 利点 | 推奨 | × 注意点 |
・電圧変動に強い ・切替時間が短い ・比較的低消費電力 ・高コストパフォーマンス | ・ データセンターやオフィス, 店舗の業務用途,一般家庭など 場所を選ばず、電源障害から保護します | 一日のなかで頻繁に電圧低下が発生することで |
● 常時インバーター方式
常にインバーターを経由して出力しているため通常時とバッテリー稼動時の切り替え時間がゼロです。
また、インバーターで一度交流電流を直流に変え、さらにインバーターを通すことにより
交流に戻す方式 (交流→直流→交流)を取っているため、ノイズが流れにくくなります。
利点 :
UPSで出力電源を生成することで高品質な電源を供給するだけでなく、
入力電源の歪みや電圧変動にも強い信頼性の高い方式です。
停電など電源障害でのバッテリー運転に切り分かる際にも無瞬断で電源を供給し続けます。
APC, Schneider ElectricのUPSでは、100V 1000VAから製品を用意し、
単相UPSでは5kVA以上の製品、すべての三相UPSに常時インバーター方式を採用しております。
常時インバーター方式は構成部品が多く、消費電力が高くなってしまう運転方式ですが、
APC, Schneider ElectricのUPSでは、省スペース、グリーンモードでの消費電量低減、
eConversionの高効率化など、一般的な常時インバーター方式の不利な点を改善する設計、技術が
多数組み込まれています。
推奨使用環境 :
ご使用場所を選びません。
オフィスや店舗の業務システム、公共施設、医療施設のPACSやレセプト、
オンプレミスのサーバールーム、大規模データセンターのほか、
工場で工作機械が近くにあり電源が乱れるような環境での実績も十分な方式です。
主な採用モデル :
Smart-UPS SRTシリーズ,
Smart-UPS Ultraシリーズ,
Symmetra LXシリーズ,
Symmetra PXシリーズ,
Galaxy VS, VL, VXシリーズ
注意点 :
電源の乱れに強い方式ですが、弊社ラインナップは、粉塵、防水などの耐環境は考慮されておりませんので、
常温、比較的クリーンな室内でご使用ください。
商用電源であれば使用環境に注意点はなく、電源環境を選びません。
推奨アプリケーション:
常時インバーター方式のUPSは、 APC, Schneider Electricブランドの三相UPSのすべてで採用している運転方式で、 入力電源の状態に左右されず、常にUPSで生成する高品質の電源を負荷機器に供給します。 工場など電源が乱れやすい環境のほか、信頼性を求められる環境での使用にも耐えるよう 高可用性を重視したモデルを取り揃えています。 |
〇 利点 | 推奨 | × 注意点 |
・あらゆる電源障害に強い ・無瞬断 ・高可用性 | ・ データセンターをはじめとする 信頼性が求められる環境や 機材が多い,大型機器があることから 波形乱れが懸念される病棟や 生産現場などに最適な方式です | 特になし |
●運転方式の比較
UPSからの出力精度は、
常時インバータ給電方式 > ラインインタラクティブ方式 > 常時商用給電方式
となります。
APCブランド, Schneider Electric 日本取り扱いUPSの運転方式とラインアップ
運転方式 | 主なUPS | ラインナップ (出力) |
常時商用運転方式 | APC ESシリーズ | 単相 100V 400VA ~ 750VA |
ラインインタラクティブ方式 | APC RSシリーズ | 単相 100V 400VA ~ 3000VA |
常時インバーター方式 | Smart-UPS SRTシリーズ | 単相 100V 1000VA ~ 2400VA |
■UPS選定にあたってのコメント
多くのPCなどのコンピューターや周辺機器では、どの動作方式のUPSを選定していただいても問題はないと考えられますが、
負荷のコンピューターや機器がシビアな入力電源仕様を要求する場合で、
停電時のバッテリー切換時間の瞬断が許されない、コンピューターメーカーが正弦波出力のUPSを推奨しているなど 、
電源状態が非常に不安定な設置場所で使用する場合等においてUPSを選定する場合は、
負荷になるコンピューターの仕様や設置場所の環境をよく検討していただく必要があります。
電力問題の種類と運転方式の適応表
電力問題 | 常時商用給電 | ラインインタラクティブ | 常時インバータ | 電力問題の概要 | |
1 | 停電 | ○ | ○ | ○ | 電力供給が停止すること |
2 | サグ | ○ | ○ | ○ | 供給電圧が一時的に低下すること (瞬低) |
3 | サージ | ○ | ○ | ○ | 異常に高い電圧が 瞬間的に入力に発生すること |
4 | 入力電圧低下 | △ or × | ○ | ○ | 供給電圧が低下すること (サグよりも長い時間) |
5 | 入力電圧上昇 | △ or × | ○ | ○ | 供給電圧が上昇すること (サージよりも長い時間) |
6 | ノイズ (高周波) | △ | ○ | 入力電圧波形に 高い周波数成分が発生している状態 | |
7 | ノイズ (スパイク) | △ | ○ | 供給電圧に瞬間的に 高周波のスパイクが発生している状態 | |
8 | 周波数変動 | △ | ○ | 入力周波数50Hz/60Hzが 変動している状態 | |
9 | 高調波ひずみ | △ | ○ | 入力電圧波形に高調波成分が含まれて 歪んでしまっている状態 |
△: 短時間なら対応可能 もしくは ある程度の軽減可能
[ご紹介]
ラインインタラクティブ方式:
従来、日本では常時インバータ方式、および常時商用給電方式がUPSの動作方式として取り入れられているなか、
1990年代にAPC Smart-UPSシリーズのラインインタラクティブ方式で日本の市場に参入し、
APCブランドUPSで多数の導入実績を積み上げてきている方式です。
APCブランド:
APCは、40年近くにわたり安定した電力供給および物理ITインフラの業界標準として事業を展開しています。
1981 年に法人化された American Power Conversion Corporation は、
1986 年ロードアイランド州に製造拠点を設立。その年に初めて UPSを製造し、PC Magazine で 「Editor's Choice」を受賞。
1989 年 PowerChute® ソフトウェアで電源管理に大変革を起こし、1990 年にはSmart-UPS® などの優れた製品を導入。
その後、日本を含む、全世界に販売網を築き、現在はシュナイダーエレクトリックのAPCブランドとして製品を
展開しております。
APCについて詳しくは こちら にご紹介させていただいております。