スイッチング電源は高効率で電力を変換する電源装置で、多くの電子機器に利用されています。ただ、メリットとデメリットがあるため、自社にとって必要かどうかを見極めることが大切です。
本記事では、スイッチング電源の基本的な仕組みや用途、スイッチング電源とリニア電源(ドロッパー方式電源)の違い、メリット・デメリット、選び方、将来性について解説します。
目次:
スイッチング電源は高効率で電力を変換する電源装置で、多くの電子機器に利用されています。ただ、メリットとデメリットがあるため、自社にとって必要かどうかを見極めることが大切です。
本記事では、スイッチング電源の基本的な仕組みや用途、スイッチング電源とリニア電源(ドロッパー方式電源)の違い、メリット・デメリット、選び方、将来性について解説します。
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スイッチング電源とは、交流電源または直流電源を直流に変換して出力するための電源装置です。交流電源を変換する場合、AC-DCコンバータ、直流電源を変換する場合、DC-DCコンバータと呼ばれることもあります。ここでは仕組みと用途、スイッチング電源とリニア電源(ドロッパー方式電源)との違いについて解説します。
スイッチング電源の仕組みは以下の通りです。
入力された電流を1つ目のダイオードを使って整流回路で整流し、直流に変換します。1つ目の電解コンデンサで平滑して直流電源を安定化させた後、半導体素子のON・OFFによる高速スイッチングによってパルス派の周波数の高い交流に変換します。その後、高圧を高周波トランスで変換した後、2つ目のダイオードで直流に変換して整流します。2つ目の電解コンデンサで平滑して出力電圧を安定させた後、直流(DC)として出力します。出力電圧が一定に保たれるよう、電圧を調整し、最終的に安定した直流(DC)電力として出力します。
スイッチング電源は大きくて重い電源トランスが不要なため、小型化・軽量化が実現されています。
代表的な用途としては、携帯電話のACアダプターやパソコン、タブレット、テレビなどの家電製品、産業用機器、通信機器、医療機器などです。
スイッチング電源とリニア電源はどちらも安定した直流(DC)電源を供給するための電源装置です。リニア電源は、別名、ドロッパー方式、シリーズレギュレーター方式、シリーズ電源とも呼ばれています。スイッチング電源と、リニア電源では仕組みが異なりますので、以下に解説します。
スイッチング電源より先に開発されたのが、リニア電源(ドロッパー方式電源)です。
リニア電源では、入力されてきた交流(AC)電流に対して、最初にACトランスを用いて電圧を下げるのが、スイッチング電源との大きな違いです。次に、ダイオードを使って整流回路で整流し、コンデンサの平滑回路で安定した電圧にします。その後、コンデンサを使った平滑回路と制御回路を通して、電圧を一定にします。
リニア電源のメリットとしては、構造がシンプルな分スイッチング電源より安価である点です。
デメリットとしては、入力電圧と出力電圧、電力に応じた専用のACトランスが必要になる点、および、スイッチング電源より効率が悪く発熱量が多い点です。リニア電源では、用途に応じた専用のACトランスが必要とするため、高電力を必要とする場合、トランスの大きさが大きくなり、電源装置そのもののサイズに影響してきます。また、入力電圧と出力電圧の差が大きいと、発熱量が増えるため、熱対策も欠かせません。このため、リニア電源は、電球やLED等比較的低電力の機器に使用されることが多いです。
リニア電源で解決できなかった高効率、小型化を実現したのが、スイッチング電源になります。スイッチング電源のメリットとデメリットを詳しく解説します。
まず、スイッチング電源の主なメリットは次のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
スイッチング電源は、半導体素子を高速でスイッチングすることで電圧を変換するため、従来のトランス式電源に比べて電力損失が少なく、高い効率で電力を変換できます。
具体的には、スイッチング電源はOFF時の電力をコイルやコンデンサーに蓄積するため、無駄な電力消費を生じません。損失が低い分発熱量も抑えられることから、リニア電源より熱に強く、大電流を流せます。そのため、ハイパワーで高効率な電源として活用できます。
スイッチング電源は高周波で動作するため、変圧器やコイルなどの部品を小型化できます。高効率な電力変換により発熱が抑えられるため、冷却機構を簡素化できることから軽量化も容易です。
また、簡易型ACアダプターのように大きく重い電源トランスが搭載されていないことも、軽量化が実現できる要因の一つです。産業用機械のように、省スペースを必要とする装置には、スイッチング電源が最適です。
スイッチング電源は制御回路や部品の組み合わせを変えることで、多様な仕様に対応できます。例えば、複数の出力電圧を持つ電源や特定の電圧範囲で動作する電源などを、比較的容易に設計することが可能です。
降圧だけでなく、昇圧回路や反転回路も簡単に作ることができます。さまざまな仕様の電源ICから選択でき、周辺回路の構成によって自由自在に出力電圧を変えられるため、柔軟な設計が可能です。
シュナイダーエレクトリック製電源であれば、幅広いレンジの入出力電圧、電流に対応したスイッチング電源のラインナップを備えていますので、機器の仕様に合う電源を選択することが可能です。
スイッチング電源にはデメリットもあります。
ここでは2つのデメリットを紹介します。
スイッチング電源は高周波トランスや制御IC、コンデンサーなど、多くの部品が必要です。安定した電圧を出力するための制御回路も複雑になるため、製造コストが上昇します。さらに、スイッチング電源を使うには、専用ICのほか周辺回路の設計が必要になります。
しかし、高効率で小型・軽量化が可能というメリットがあるため、高電力、性能やサイズを重視する用途では、コストが高くてもスイッチング電源が選択されるケースがほとんどです。
スイッチング電源は半導体素子のON・OFFによる高速スイッチングによってパルス派の周波数の高い交流に変換する過程で、微小な電気振動やノイズが発生します。そのため、精密機器にはあまり向いておらず、オーディオ機器や高精度な計測機器など、ノイズに敏感な機器では誤動作や性能低下の原因になりかねません。
スイッチング電源は自社に合ったものを選ぶのが大切です。ここでは5つのポイントから、スイッチング電源の選び方を紹介します。
まずは使用する機器の消費電力に合ったスイッチング電源を選択しましょう。機器の消費電力は、取扱説明書や製品本体に記載されています。記載されている消費電力よりも20~30%程度余裕を持った電力出力のスイッチング電源を選ぶと、安定した動作が期待できます。
複数の機器を同時に使用する場合は、それぞれの消費電力を合計し、その合計値よりも余裕を持った電力出力の電源を選びましょう。
適切な出力電圧だけでなく、搭載するデバイスの電力需要を見極めることも重要です。負荷による消費電力、電圧、電流を正確に理解する必要があります。特に、自分の機器が一定の電力レベルで動作しているか、最小およびピーク時の電力需要がどの程度かを把握することが不可欠です。
入力電圧範囲が使用する地域の電圧に対応しているかも確認しましょう。日本の工場の入力電圧は一般的に200Vacですが、海外では400Vac以上の地域もあります。ユニバーサル入力に対応していれば、世界中の電圧に対応できるため、海外でも使用できます。
シュナイダーエレクトリック製のスイッチング電源であれば、85~575Vacまで幅広く対応したラインナップを備えています。
負荷変動とは、機器の動作状況によって消費電力が変化することです。負荷変動が大きい機器を使用する場合、負荷変動に対応できるスイッチング電源を選ぶ必要があります。
特に、モーターやLED、容量性負荷装置に対しては、起動時の突入電流による過負荷を防ぐために、適切なスイッチング電源を選ぶことが大切です。これらの機器は、起動時に定常状態よりも大きな電流を必要とするため、電源側から大きな電力を必要とします。そのため、スイッチング電源の過電流保護機能が適切に動作しなければ、電源が損傷する恐れがあります。
シュナイダーエレクトリック製電源であれば、過電流保護機能を備えており、復帰においてマニュアル/自動復帰の2種類から選択できます。また、突入電流の最大値も仕様書に記載されていますので、用途に応じて適切な電源を選択することができます。
必要に応じて、保護機能を持つスイッチング電源を選びましょう。例えば、過電流保護、過電圧保護、短絡保護などの保護機能は、安全な動作のために重要な機能です。これらの保護機能は、電源や接続された機器を損傷から守るために不可欠です。
シュナイダーエレクトリック製の電源であれば、過電流/短絡保護機能、過電圧保護の機能を備えています。これらの復帰方法も、自動復帰/マニュアル復帰から選択することが可能です。また、出力電圧調整機能等、利便性を向上させる機能もあります。
スイッチング電源は、IT化が進む現代において注目されている装置の一つです。ここではスイッチング電源の将来を紹介します。
スイッチング電源の市場は、今後も堅調な成長が見込まれています。主な要因は、電子機器の普及拡大です。ある調査によると、2030年までに電子機器のユーザーへの普及率は22.3%まで上昇するといわれています。
スイッチング電源は軽量でサイズが小さいため、携帯機器から産業機器や家電製品まで幅広い電子機器に使用されています。したがって、電子機器の普及はスイッチング電源の成長につながるといえるでしょう。また、今後益々の普及が予想されるデーターセンターにおいて、電力損失を少なくするために、48Vdc出力の直流電源が必要とされていることも、見逃せない点です。
さらに、燃料の消費や環境問題への意識の高まりから、スイッチング電源を使用する電気自動車の市場も拡大しています。電気自動車はガソリン車に比べてエネルギー効率が高く、環境負荷が少ないため、世界的に普及が進んでいます。電気自動車の普及に伴い、高効率で信頼性の高いスイッチング電源の需要も増加すると予想されるでしょう。
スイッチング電源は半導体技術の進歩により、スイッチング素子や制御ICのさらなる小型化・高性能化が進められています。また、回路設計の工夫や高密度実装技術の採用により、電源の高密度化が求められています。
このようにスイッチング電源は適度に小型化が進み、電力密度も上昇し続けると予想できるでしょう。一方で小型化が進むと、無駄な熱を放散することが難しくなります。
このような課題において注目されているのが、より高度な放熱技術の開発です。将来的には窒化ガリウム(GaN)や炭化ケイ素(SiC)といった次世代半導体材料の採用により、さらなる高効率化・小型化が期待されています。
スイッチング電源は、高い電力変換効率や電源の小型化・軽量化といったメリットがあります。電子機器が普及を続ける中、より高効率で小型な電源の需要が増えていくため、今後はさらなる高効率化・小型化が期待できるでしょう。
シュナイダーエレクトリックでは、「DINレール取付」「パネルマウント取付」「ベーシックパネルマウント取付」のラインナップを提供しています。また、グローバル企業の特性を生かして、各国の入力電圧に対応できるよう、85~575Vacの幅広い入力電圧に対応する電源ラインナップを備えています。出力電圧は5~48Vdc、出力電流は0.42~40Aまで用途に合わせて選択が可能です。グローバルサプライチェーンを生かした安定供給、各国でのサポート体制もありますので、輸出用電源としても最適です。どのようなスイッチング電源を選べばよいかお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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